検体検査部門

一般検査

  • 一般検査1
  • 一般検査2

 主に、尿・便・体腔液を扱った検査を行っています。
 中心となる尿検査は、腎臓・尿管・膀胱などの異常や糖尿病などの発見に役立ちます。全自動測定装置や顕微鏡などを用いて検査を行い、尿の性質や尿中成分を調べています。
 便検査では、大腸がんの早期発見に役立つ便潜血検査や寄生虫の感染が疑われる時の虫卵検査なども行います。
 その他、髄膜炎などが疑われる時の髄液検査や、呼気を用いて胃潰瘍や胃がんの原因になるピロリ菌を調べる検査、胸水・腹水・精液などの検査も取り扱います。

血液検査

 血液は血球成分と血漿成分から構成されています。血球成分は、赤血球・白血球・血小板の大きく3つに分類され、それぞれの量を調べる「血球算定検査(血算)」と、顕微鏡で細胞の形態を観察する「血液像検査」があります。
 一方で、血漿成分の9割は水分から構成され、それ以外には蛋白質やホルモン、糖などの成分も含まれています。この中で、出血などの際に血を固めるための役割を持つ蛋白質(凝固因子)を詳しく調べる検査が「凝固検査」です。

①血球算定検査(血算)

・赤血球系:赤血球数・ヘモグロビン濃度・ヘマトクリット値を検査することにより、主に貧血の有無や程度を知るのに役立ちます。
・白血球系:白血球は好中球・リンパ球・好酸球・好塩基球・単球に分けられます。これらの割合を調べることで様々な病態を推測することができます。
(例)好中球の割合が高い:細菌による感染など
  好酸球の割合が高い:寄生虫感染、アレルギー性疾患など
  リンパ球の割合が高い :ウイルス感染など
・血小板系:外傷などにより血管が傷つけられ、出血してしまった場合には、まず血小板が傷ついた血管を覆い(粘着)、血小板同士が塊となる(凝集)ことで、止血が始まります。血小板の数や固まりやすさを検査することで、血が止まりやすいか止まりにくいかを知るのに役立ちます。

血液検査 血球算定検査(血算)
②血液像検査

スライドガラスに塗り広げた血液を特殊な試薬で染めた後に顕微鏡で見ることで、細胞の種類や、血球の形・大きさを観察します。血算だけではわからなかった病態や、疾患を推定することができます。
 また、血液細胞は、骨髄と呼ばれる骨の中の組織から作られています。そのため、血液中に白血病細胞のような異常な細胞が認められた場合、骨髄に直接針を刺し、骨髄液を採取します。その骨髄液を顕微鏡で観察し、異常細胞がないかを調べます。当院では臨床検査技師が病棟や外来へ出張し、検体採取の補助や標本作製をその場で行っています。この骨髄像検査は、血液疾患の診断に必要不可欠な検査です。しかし、県内で実施している施設は当院を含めてもそれほど多くないのが現状です。

血液検査 血液像検査
③凝固検査

 血管が何らかの原因で破れて出血してしまった場合、まず血小板が血管を覆い止血が始まることを、「一次止血」といいます。その後、凝固因子と呼ばれる蛋白質が反応することによって、その止血栓がより強固なものになります。これを「二次止血」といいます。凝固検査ではこの「二次止血」に関与する凝固因子について調べることで、止血する機能がきちんと働くかどうかを知るのに役立ちます。
 また、凝固因子は肝臓で作られるため、間接的に肝臓の能力も見ることができます。手術前に血液がきちんと止まるかどうか、あるいは、血液を固まりにくくなる薬を服用している患者では、薬の効果を確認するために検査をしています。

血液検査 凝固検査
④当院の特色

 当院には血液内科はありませんが、骨髄検査を院内で実施することで、早期診断や血液内科のある病院への早期転院に大きく役立っています。また、血液認定検査技師も在籍しおり、学会・研修会での発表なども積極的に行っています。

生化学・免疫学的検査

①生化学検査
生化学・免疫学的検査 生化学検査

 患者さんの血液や尿などに含まれている、様々な成分の濃度を化学的に分析する分野です。体に異常がないか、栄養状態はどうか、病気の治療効果や経過はどうかなど、患者さんの状態を知る上で、必要不可欠な検査です。
(例)肝機能:AST・ALTなど
   栄養状態:総蛋白・アルブミンなど
   動脈硬化:中性脂肪・コレステロールなど
   糖尿病:血糖・HbA1cなど

②免疫学的検査
生化学・免疫学的検査 免疫学的検査

 免疫とは、体の外から入ってくる病原体(細菌やウイルス)から、私たちの体を守る防御システムのことを言います。体内に病原体が侵入すると、体の中で「抗体」が作られ、この抗体が病原体を攻撃したり、体から排除したりしてくれます。この抗体の量を測定し、主に感染症の有無や過去の感染歴を調べています。
 また、この「免疫」の原理を検査に応用することで、ホルモンや腫瘍マーカーと呼ばれる、癌の発生に伴って血液中で増加する酵素やたんぱく質など、体の中の微量な物質を測定することができます。
 これらの結果をもとに現在・過去・未来の状態を予測し、治療に役立てています。

輸血検査

①輸血検査

 主に外傷や手術などで出血量の多い患者さんに対して、血液を体内に入れる臓器移植の1つです。輸血する血液(=自分以外の血液)は、本来は異物であるため、体の中に入ってきた異物を排除しようとする「免疫」が働き、重い副作用が起こります。
 この副作用が出ないように、血液型を検査し、さらに患者さんに血液を輸血しても大丈夫か(=適合しているか)どうか、詳しく検査するのが「輸血検査」の役割です。

②当院の輸血検査における特色

 当院は、緊急輸血(出血量が非常に多く、通常の輸血検査を行う時間的余裕がない場合の輸血)の件数が多く、24時間365日輸血対応しています。緊急輸血の件数が多いのは、当院が青森県南を医療圏とした三次救急医療機関であり、ほぼすべての外傷患者(交通事故等)が当院に搬送されるという背景があるためです。
 その他にも、輸血量の少ない新生児のために血液製剤の分割(輸血副作用の軽減、血液製剤の有効利用のため)、止血効果が非常に高いとされるクリオプレシピテートの作製も行い、臨床へ大きく貢献しています。

  • 輸血検査1
  • 輸血検査2

細菌検査

 細菌検査室は微生物による食中毒や化膿・炎症が疑われる患者さんからの検査材料(尿・便・喀痰・血液・膿など)から感染症の原因菌を特定し、その菌に対する抗菌薬(=抗生物質)の効果の有無を検査する部門です。当細菌検査室の業務内容は大きく分けて3つに分類されます。

①一般細菌検査
  • 細菌検査 一般細菌検査1
  • 細菌検査 一般細菌検査2

・顕微鏡検査
検体をスライドガラスに塗抹し、「グラム染色」という染色法により菌体をグラム陽性菌(=青紫色)・グラム陰性菌(=赤色)に染め分けます。グラム染色は、非常に簡便かつ低コストでありながら、検体中の白血球の数や変性の程度、菌体の貪食像の有無、その他の細胞の様子などから患者さんの病態を把握することが可能で、観察される菌が真の起炎菌なのか、あるいは単なる定着菌なのかを見極めることが非常に重要となる検査です。

・培養検査
患者さんの情報や提出された検体に応じて、塗抹する培地を選択します。人の体温に近い温度で24~48時間(血液培養は1週間)培養し、菌を肉眼で観察できる程度(=コロニー集落)まで増殖させます。当院では様々な薬剤耐性菌スクリーニング培地を導入し、検体を直接塗抹しています。迅速報告の一環として、菌の発育が確認された段階で、各病棟師長に連絡し院内感染対策をとってもらっています。

・同定・感受性検査
培養により発育したコロニーの性状(大きさ・色・形・匂い)と様々な試薬・試験管培地・同定キット等の結果から菌種を同定していきます。グラム染色により感染症の起炎菌と思われる菌種や日和見感染の原因菌、薬剤耐性菌に対する各抗菌薬の効果の有無を検査します。

②抗酸菌検査

 抗酸菌検査では主に結核菌と非結核性抗酸菌症の主な原因菌であるMycobacterium avium complex(=MAC症)の検査を実施しています。
 抗酸菌の検出は蛍光染色法(菌体は橙色の蛍光を示す)による染色を実施し、蛍光顕微鏡にて抗酸菌の量を確認し、どのくらい体外へ排菌されているかを確認します。
 当院では抗酸菌遺伝子増幅検査を導入しています。結核菌は空気感染を引き起こす非常に重要な病原体であるため、迅速な結果報告が可能なLAMP法、MAC症はTRC法にて検査を実施しています。
 抗酸菌の培養同定・感受性検査は当院では実施しておらず、外部委託しています。

③遺伝子増幅検査
細菌検査 遺伝子増幅検査

 感染症の確定診断には培養同定法が用いられてきました。培養法の確立していない、もしくは培養に時間がかかるような病原微生物の同定法として、現在は遺伝子増幅検査が用いられるようになりました。
当院でも抗酸菌遺伝子増幅検査のほかに、以下の遺伝子増幅検査を導入しています。
・LAMP法によるマイコプラズマ核酸検出
・TRC法によるSARS-CoV-2核酸検出
・全自動遺伝子解析装置 Film Array multiplex PCR法 「FilmArray multiplex PCR法」とは
患者さんの臨床症状から予想され得る、幅広い病原体を同時に検査することができます。操作が簡便かつ結果報告まで迅速に行うことが出来ます。
○呼吸器パネル(18種のウイルス・3種の細菌)
○髄膜炎・脳炎パネル(7種のウイルス・6種の細菌・1種の真菌(カビの仲間)
○血液培養パネル(8種のグラム陽性菌・11種のグラム陰性菌・5種の真菌・3種の薬剤耐性遺伝子)

④その他の取り組み

・ICT(Infection Control Team:感染制御チーム)活動とAST(Antimicrobial Stewardship Team:抗菌薬適正使用支援チーム)活動への参加
・薬剤耐性菌の検出状況や院内の感染症の発生動向の調査(サーベイランス)
・アンチバイオグラムの作成
・院内感染発生時の環境培養・病棟一斉スクリーニング検査
・研修医へのグラム染色法・顕微鏡の使用法の教育

生理機能検査部門

 生理検査とは、様々な機器を使用して、からだの状態を直接調べる検査です。主に心電図検査、肺機能検査、脳波検査、超音波検査、血圧脈波検査などを生理検査室で行っています。生理検査部門では検査室での検査のほか、出向業務も行っています。
・耳鼻科外来での聴力検査、平衡機能(めまい)検査
・手術室での術中モニタリング(運動・感覚神経機能の評価)
・産科外来での胎児エコー検査
・周産期センターでの新生児聴力検査

心電図検査

 心臓の電気的興奮(動き)を体の表面につけた電極でとらえ、波形として記録します。心臓のリズムや波形の大きさ、形の変化で異常が無いかを調べる検査です。
 安静時の検査のほか、2段の階段を昇降運動して心臓に軽い負荷をかけ症状の有無や心電図の変化を記録する運動負荷心電図、約24時間の心電図を連続的に記録するホルター心電図検査があります。

  • 心電図検査1
  • 心電図検査2

肺機能検査

 肺の働きを大きく分けると、空気を出し入れする呼吸機能、酸素を肺から血液中に送り込み二酸化炭素を血液中から運び出すガス交換機能の2つがあります。鼻を閉じた状態で大きく息を吸ったり吐いたりすることで、この呼吸機能とガス交換機能がスムーズに行われているかどうかを検査します。

  • 肺機能検査1
  • 肺機能検査2

脳波検査

 頭に付けた10~20個の電極で脳の中を流れる微弱な電気活動をとらえ、波形として記録し脳の働きを調べます。病気の種類によって波形が異なることから、脳の活動の変化、機能的な異常を知ることができます。覚醒時や睡眠時の脳波、様々な刺激(眼の開閉、深呼吸、光の点滅)に対する脳波の反応を記録します。

  • 脳波検査1
  • 脳波検査2

超音波検査

 人には聞こえない高い音(超音波)を体に当て、その反射波で画像を作り、種々の臓器を調べる検査で、エコー検査とも呼ばれます。心臓や腹部の各臓器、血管等が検査の対象となります。心エコー検査では心臓の大きさや動き、弁の状態などを観察します。腹部エコー検査では肝臓、膵臓、腎臓、胆嚢、脾臓、膀胱などの各臓器の形態的変化や腫瘤の有無などを調べます。血管エコー検査では血管内の血栓、狭窄の有無を調べます。

  • 超音波検査1
  • 超音波検査2

血圧脈波検査

 両腕と両足首の血圧を測り、心臓から出た脈波(拍動)の血管内の伝わり方や、腕と足首の血圧の比を調べます。脈波の特徴として、硬いものは早く伝わり柔らかいものはゆっくり伝わることから、動脈硬化の程度を知ることができ、腕と足首の血圧の比からは足の動脈に詰まりや狭窄がないかを知ることが出来ます。

  • 血圧脈波検査1
  • 血圧脈波検査2

病理検査部門

 病理検査は、手術や内視鏡で採取された組織を検査する組織診と喀痰、尿、腹水などに含まれる細胞を検査する細胞診があります。現在2人に1人は一生のうち一度がんにかかり、3人に1人ががんで亡くなるといわれています。病理検査はがんの早期発見や治療方針の決定、薬剤効果や副作用の患者個人差を予測する個別化医療等において、ますます必要とされる分野です。

病理組織検査

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  • 病理組織検査2

 組織診は、手術などで採取された組織を薄く切り出して標本を作製し、顕微鏡で鏡検して病態などを推定、判断します。そのほかにも、手術中に提出された検体を速やかに検査し、病理医が診断して、手術室の執刀医に結果を知らせる術中迅速診断があります。この診断結果は、その後の術式を左右する重要なものです。その他、臨床診断や治療効果の確認のための病理解剖、有効な治療薬の決定に関わる免疫染色や遺伝子検査なども行っています。
 当院は、東北管内でも数少ない病理検査領域の遺伝子検査を導入している施設です。肺癌のドライバー遺伝子とされるEGFR遺伝子の変異解析を検体処理から検査実施までを院内で行っています。そのため、外注検査に比べ検査結果報告が早く、早期の治療方針の決定を可能としています。

細胞診検査

  • 細胞診検査1
  • 細胞診検査2

 細胞診は、尿や腹水などに含まれる細胞を様々な方法で集め、検体処理します。それをスライドガラスの上に塗抹、染色して標本作製します。細胞診をする臨床検査技師のことを細胞検査士といいます。細胞検査士が作製した標本から顕微鏡を用いて、良性細胞か悪性細胞か見分けたり、悪性細胞を見つけ出し、判定します。
 当院では、細胞検査士の資格を持った技師が3名在籍しており、そのうち2名が国際ライセンスを持っています。資格を持った技師が検体を採取する場面で、検体の適否を判断する立ち会い細胞診検査も頻繁に行われており、臨床に貢献しています。また、毎週臨床医と病理医、臨床検査技師でカンファレンスも実施されており、臨床の相互理解とより良い診断につながっています。