臨床研修について

臨床研修センター所長  今 明秀

指導医には多くの役割がある。「胸痛を診たら、心筋梗塞、大動脈解離、肺塞栓、食道穿孔を除外しなさい。」と言う知識の伝授、「ベッド上の患者さんと話すときは、必ず座って話しなさい。」と言うマナーの伝授、「老人では多彩な症状を呈していても、ひとつの病気からくると考えて鑑別診断をしなさい。」と言う経験則の伝授、「採血がしにくい場合は、腕を下垂させればいい。」と言う手技の手ほどきなどである。また研修医の肉体的、精神的ストレスへの配慮も一人一人に必要である。さらに将来の医師像としてロールモデルになれれば最高だ。
著者は、30年前に当時は珍しい、多科ローテーションの研修医生活を送った。当時は、外科ストレートの研修医をうらやましく思ったことがあった。しかし今こうして長く医師をやっていると、研修医時代の無駄と思われた、婦人科や、皮膚科、小児科の研修が肥やしになっている。当院ではローテーション経験のある医師が、研修責任者として君たちに接することになる。君たちがこれから直面する問題を十分理解しているつもりだ。
八戸市立市民病院には高度医療を担う内科外科をはじめ各診療科が充実している。他施設では研修不可能な形成外科、心臓外科、病理での短期研修も可能である。1~2年の前半で必修科をローテートした後に、2年目後半で将来の方向性を変更可能である。

これから、八戸市立市民病院の紹介をしよう。

病院は五つ星

ホテルなら五つ星の超有名ホテル。病院の五つ星とは(1)臨床研修指定病院(2)地域医療支援病院(3)第三次救命救急センター病院(4)日本医療機能評価機構認定病院(5)後期研修基幹病院となる。これをクリアーする病院は日本にそう多くない。五つ星病院で働いてみないかい。

建物は新しい

2003年の病院建築雑誌の表紙を飾った、モダンな外見である。玄関を入ってすぐのホスピタルモールと名づけられた広場は、フローリングで4階までの吹き抜けである。中央には植物が植えられている。リッツカールトンホテルには遠く及ばないが、公立病院としてはいい線行っている。モールは外来患者さんの憩いの場所であり、各種講習会の会場になる。一次救命処置&AED講習会では、350名を収容した。外傷初期診療講習会では150名を収容した。災害時は、救護所に変身するため、壁には酸素の配管が備えてある。災害講習会は吹き抜け2階から全景が丸見えにして行う。周産期救急講習会の救急車内分娩実技は、モールにつながる自動ドアから救急車を室内に入れてしまう。

八重洲口から2時間40分

東京駅から新幹「はやぶさ」に乗ってください。朝東京を出ても、昼に「ウニご飯」を病院食堂で一緒に食べられます。2時間40分後には八戸駅に到着します。昨年度見学者は120名突破。見学者用院内宿泊施設あり。

研修医室

2面ガラス張りの太平洋に向いた方向に、研修医50名収容の研修医室がある。残念ながら、君らが部屋に戻るのは、日暮れ後のため、せっかくの風景を拝めない。2段ベッドには、低反発マットが敷いてある。帰宅するか、そのまま寝るか、選択に迷ってしまう。

当直室

バス、トイレつきシングルベッドの個室である。ワシントンホテル並み。空調の清潔さはホテルを超えている。花粉症も怖くない。八戸市は関東、関西に比較して排気ガスが少ないためか、花粉症の患者さんは少ない。また花粉が飛ぶ期間は関東の半分だ。都市部に住んでいて花粉症で悩んでいる君、花粉症の季節に試しに八戸市を訪れてみてはどうだろ。鼻水がたまる感染防御のマスクは不快なものだ。

レディースドクター専用ルーム

女性医師のために、専用の休憩室を作りました。男性進入禁止です。いい香りがします。

積雪

八戸市は、冬の積雪20cmくらいだ。しかし、気温は零下に下がるため、スタッドレスタイヤが必要。車で50分走ればスキー場がある。安比スキー場までは80分。スノーボードで怪我をしても心配ない。院内には脊椎外傷で日本有数の腕を誇るゴッドハンドドクター末綱がいる。スポーツが不得意でも魅力満載。冬の高気圧で青い空の八戸から車で走れば、秘湯があちらこちらにある。乳白色の温泉と雪をめがけて東京から団体バスが来ているよ。地元顔で温泉に浸かろう。

晴れ

天気が良い日が多い。オモテ日本気候の最北端である。夏は湿度が低く過ごしやすい。梅雨の関西の不快感と比べれば、外国のようだ。素敵なブラウスにカビが生えることはない。夏の最高気温はもちろん30度を超える。ようやく30度を、超えるくらい。東京、大阪の灼熱地獄とは無縁です。それにしてもなぜあれほど熱中症が発生する都会に人が住むのだろうか。2年も八戸に住めば、みんなそう思う。夏の猛勉強で都会の研修と差をつけろ。心地よい気温と湿度で脳細胞がATPを有効利用できる。

歓楽街

長横町と言う、東北屈指のネオン街が近くにある。歌舞伎町とは違い外国人が少ないので、スリルは味わえない。魚の水揚げ量と地酒の豊富さを合計すれば、全国の研修指定病院中でおそらく日本一。町のシンボルはイカである。研修医の少ない給料でも十分堪能できる低価格である。7割の研修医は1年過ごすと体重が増える。

三沢エアベース

三沢基地のERから搬送されてくる患者は多い。君は英語を話せるかい?患者と一緒に私服のDrがついてくるよ。よく話を聴くと、彼らも研修医。

国立公園に指定されている海岸には、鳴く砂がある。天然芝の緑がまぶしい。お台場の人工砂や、沖縄の歩くと痛い砂とは違う。ボディーボードやサーフィンポイントまで病院から25分。外科医局では夏になると海水浴&BBQに海岸へ繰り出す。外科医師全員が海に出ても大丈夫。緊急手術時は、すぐに戻れる距離だ。研修医は4月に一次救命処置講習会を受けているけれど、自分が溺れたら役に立たない。

給料

35万円で、不人気だったので、45万円に値上げした。この額はアメリカの研修医並みの給料である。どうだい十分だろう?研修医を15名以上採用する病院では、最高額に近い。安い、旨い、近い歓楽街へは、時々しか出かけられないので、貯金ができる。車も買える。海が近いのでかもめの糞が時に車に降りかかる。冬はバイクに乗れないので、結局車が便利。バイク事故での急性硬膜下血腫(CT三日月型)にならずに済む。

カフェラテ

医局では、カプチーノとカフェラテを無料で飲める。うらやましいでしょう。パナソニックのマッサージチェアが2機。もちろん無料です。でもいくらマッサージしても大脳皮質は柔らかくならない。

学会

年間約30万円の学会出張費がもらえる。八戸から東京は新幹線「はやて」で2時間40分。仙台だと90分。都内の研修医は、学会出張はつまらない。なぜなら全て日帰りだから。八戸からだと一泊で旅行気分だ。「はやぶさ4号」に乗ると、午前中から東京の学会に出席できる。一泊して次の日に帰ればいい。
終電は20時と早いので要注意。ハメをはずして乗り遅れた君には、夜行ハイウェイバスが待っている。バスに乗る前には水分補給を忘れないでほしい。肺塞栓と深部静脈血栓症のリスクファクターを思い出せ。

ACLS

病院では救急医学会認定の ICLS と言う心肺蘇生二次救命処置講習会を行なっている。遠くに出かけなくても受けられる。費用は病院で負担してくれる。他病院からの参加者は有料。

外傷初期診療コース( PTLS , JATEC )

院内で開催している。JATECの外傷診療デモンストレーションと全く同じものが、八戸で見られる。PTLSは、研修医全員受講が義務付けられる。九州、北海道からも受講生が来る。毎年8月に予定している。テキストは、DVD[まちがいのない救急基本手技]。気道、呼吸、循環、意識、体温のチェックだよ。

名人、循環器内科

心臓カテーテル検査は800例以上を誇る。平賀部長と言う名人がいて、内科研修では一番人気。救急外来には、週に3回は除細動症例が来る。3ヶ月で何回除細動できるかな?3年目の専攻医研修に進めば心臓カテーテルが夢にも出てくる。

胃切除、外科

研修医の信頼一番。古い時代から研修医を教育してきている。3年目の専攻医研修に進めば、胃切除、大腸切除だ。他に乳腺手術は年間130例。市民から信頼されている証だ。

気管挿管は一人平均80例、麻酔科

医師免許を取ったらどんな手技をやりたいですか?の質問には「気管挿管です」のアンケート結果が出ている。気管挿管は5月に、人形で一人120回。それから麻酔科を研修して全身麻酔で一人平均80例挿管。あとは、ERで緊急気管挿管に挑む。

にんにく日本一、マグロ日本一

地域医療研修は、にんにく日本一で田子牛の産地の田子町の施設で行なう。焼肉好きは高脂血症に注意。田子町までは車で1時間。米よりウニが多いウニ丼を食べたことはあるかい?本州最北端大間町はマグロだけでなくウニでも有名である。大間病院までは線路は届いていない。バスで行ったら4時間はかかる。患者救急搬送時はヘリコプターだ。

King of residency

研修修了時に学術発表会を行う。指導医が審査し優秀賞を表彰する。

心のケアチーム、精神科

災害で活躍した.「心のケアチーム」が、指導してくれる。薬物中毒や自殺企図患者も多い。精神科研修中に大地震があったら、君も「心のケアチーム」に同行するかい?研修医生活は山あり谷あり。自ら心に変調を来したら早めに精神科を受診だ。あっという間に、元に戻れる。

ばっちりの小児科

一次救急も、病棟も、外来も、NICUも、新生児ドクターカー搬送も全部やっちゃう小児科です。1から2ヶ月で、小児のcommon disease は、ばっちりです。君の受け持ちで一番多いのは痙攣か、それとも喘息か、イヤ感染症?3年目の専攻医研修に進めば、帝王切開後の新生児の診療は君の役割。一緒に診療する指導医も八戸研修医OBだ。

癒しの産婦人科

異常分娩が400件を超える。もちろん正常分娩も多い。トータルで年間1400件。外科の後に回ると、赤ちゃんが誕生する光景は癒しになります。ところで君は手先が器用かい?もしyesなら、帝王切開の手術チャンスがある。地域の産婦人科崩壊の逆風をここでは、追い風にできる。3年目の専攻医研修に進めば、圧倒的な症例が君の物。

超緊急輸血

交差適合試験が、間に合わない出血性ショックに対して、超緊急で、O型輸血を開始します。これが出来ないと患者は命を失います。緊急O型輸血体制が完備されている救命救急センターが八戸にはあります。

歩くアサクラ内科

中心静脈穿刺

著者は夏の沖縄、冬の東京ディスニーランドで、中心静脈穿刺の実技セミナーを担当している。「ERアップデート」で検索してみて。院内の研修医には、同内容のセミナーを開催しているよ。中心静脈穿刺は人形と超音波で使って実技講習会で一人80回カテーテル操作を経験する。すごいでしょう。

災害派遣

国のために命を賭けたことはあるか? 災害時には数時間以内に、緊急医療チームDMATを派遣する。派遣のときは、海上自衛隊の救難ヘリ、三沢航空自衛隊の航空機で現地入りすることもできる。反射板が光る真っ赤なユニフォームは、国際ルールで決められた災害現場の医師の目印だ。しかし、この色を着こなせる医師はそうはいない。国内で赤のユニフォームは八戸だけ。八甲田山雪崩、岩手・宮城内陸地震など実績を重ね、東日本大震災では八戸の被災地を守りながらDMATを延べ8隊も外に派遣した。名実ともに災害現場のリーダーの証。院内災害実技講習は年2回、別メニューで行う。

東日本大震災

津波被害から街は復興しています。病院は完全に元通りです。海岸線には津波警報時の避難路看板がいたるところにあります。電柱には、ここまで津波の青い線が描かれています。あの悲劇を忘れてはいけません。街にはいまだに行方不明となっている家族もいます。

救急

ご存知、研修責任者の得意技。日本一の救命救急センターを作るために2004年に転勤してきた。著者のコトを知りたい人は、書籍「劇的救命日記」を、インターネットで買ってみてほしい。2015年救急収容件数は23,000件、救急車が6,000件あった。心肺停止患者は300例、重症脳血管障害は300例。歩いてくる患者から心肺停止までを一つのフロアーで扱うERを展開している。7月からは副当直が始まり、2年目からは本当直が始まる。夜11時頃の救急室は、医師、看護師、患者、家族、救急隊でごった返している。この経験は、都内の救命救急センターでは味わえない。都内の病院の多くは、三次救急のみ扱っているだからだ。いつでも救急専門医がバックアップしてくれるので、致死的傷病者も怖くない。救急は麻酔科と別に3ヶ月回る予定でホンモノの救急医が指導する。3年目救急専攻医として進むと有利性がある。他院研修医から編入には試験を行うが、院内研修医からなら全員合格にする。八戸劇的救命チームのバックプリントスクラブを君にも着てもらいたい。

男女交際

仕事、勉強に明け暮れる研修医だが、男女交際も盛ん。それはそうだ。一日中同じ空間で生活すれば、仲良くなる。私はいいと思う。研修医の男女交際大賛成。3年目、4年目で行う結婚披露宴は同窓会になる。

まとめ

病院見学は、随時受け付けている。月曜と、水曜の夜は、救急外来が大フィーバーする。そこをめがけて見学に来てほしい。宿泊無料、食事無料。病院見学時に同期見学学生の多さと、働いている二つ年上の研修の輝きに驚くはずだ。できれば二つ以上の施設を見学した後に来てほしい。違いが判る。

八戸市立市民病院へのアクセス(市内)

※以下の電話またはメールでも、見学を受付けています。

研修医からのメッセージ

研修医完成講座

研修医を対象に、院内外の講師による勉強会を毎月第2・4水曜日に開催しています。

平成29年度 初期研修医 募集について

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